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実は、家賃保証を取扱う「保証会社」に対する法規制が、現在はありません。
金融業の場合は「貸金業法」という厳格な法律があり、取立てにも規制・罰則が厳格に決められている為、家に押しかけたり、職場に押し掛けたり・・・などという行為は、規制されています。
しかし、賃貸保証の業界では、そういった規制がなく、強引な取り立てが現在進行形なのです。
そのため、家賃保証会社は現在、「やりたい放題」と言われてしまっています。
このような問題がありながら、どうして規制する法律が整備されないのでしょうか?
貸金業(サラ金・カードローン等)であれば、貸金業法で取り立て行為が厳しく規制されています。
銀行ローンは銀行法による規制があり、金融庁により監督が行われています。
また携帯電話料金についても、総務省が監督省庁として、料金体系などが不当にならないよう指導しています。
当然ながら、不動産業についても、国土交通省が監督省庁となり、借地借家法などで規制が行われています。
しかし、家賃保証会社は不動産業者ではないため、こうした法規制や省庁の監督外となってしまい、「家賃保証会社はやりたい放題」と言われるようになってしまったのです。
家賃保証会社の取り立てに対しての法規制は、以前国会で審議されたことがあります。
通称「追い出し規制法案」と呼ばれたもので、2010年2月23日、当時の民主党政権により閣議決定され、同年4月に国会に提出されました。
国会での審議が行われたものの、現状は法律として制定されませんでした。
では、なぜ家賃保証会社を規制する「追い出し規制法案」は廃案となったのでしょうか?
一般的に、家賃保証会社は物件オーナーから見れば家賃回収を任せられる安心サービスということになりますが、「入居者=消費者」の立場に立った場合、いわゆる債権回収業者の一種という面があります。
当時「追い出し規制法案」が審議された時の内容は次の通りでした。
賛成派の意向としては、サラ金と同等の規制が必要というものでしたが、反対派の意向としては悪質な滞納を助長するといった点が指摘されました。
こうして、結果的に「追い出し規制法案」は廃案となったのです。
しかしながら、家賃保証会社を規制する法律がないからといって、悪質な家賃の取り立て行為が許されているわけではありません。
数年前、神奈川県に住む40代男性が、2ヵ月分の家賃(合計8万円)を滞納したことで、家賃保証会社から家財撤去をされたり、別の鍵をつけられたりなどし、不当な「追い出し行為」を受けたとして、保証会社を訴えるという事件がありました。
その男性は、しばらくの間公園やファストフード店などで過ごすことになったとし、保証会社「ラインファクトリー」に330万円の損害賠償を求め、提訴しました。
戸室壮太郎裁判官(東京地裁)は、こうした保証会社の行為が「窃盗や器物損壊罪にあたる」と指摘し、合計55万円の賠償を命じました。
このように、許可もなく部屋の解錠をして中へ入ったり、鍵自体を交換して賃借人が中へ入られないようにしてしまうことは、すべて違法な行為です。
他にも、賃借人に対して暴言を吐いたり、脅し文句を書いた貼り紙をドアに貼ったり、近所に聞こえるような大声で督促をすることなども違法行為とみなされる場合があります。
いくら法規制がないといっても、悪質な取り立て行為は罰せられるのです。
また、万が一賃貸借契約書に「賃借人が賃料の支払いを滞らせたときには、賃貸人は直ちに鍵を交換できる」旨や「退去にかかる現状復帰費用は全て賃借人の負担とする」旨など、”賃借人が不利になる”特約が書かれていても、それらは全て無効となります。
交通ルールでいうところの歩行者と車両の関係のように、法律的には、賃借人(借主)は賃貸人(貸主)よりも弱者の立場にあるとされています。
トラブルが起きた場合にも、弱者である賃借人が守られるようになっているのです。
とはいえ、入居者(消費者)からすると、身を守るためのきちんとした法律がないのは不安ですよね。
法律がない以上、何かトラブルがあっても、必ずしも守ってもらえる保証はありません。
残念なことに、近年も「追い出し規制法案」と同様の法案が審議された事はなく、「法律がない」という事で、家賃保証業界に新規参入する会社は非常に多いのです。
しかし、実は家賃滞納や夜逃げが非常に多いため、採算が合わずに止めていく会社もまた、多いのです。
というのも、大家さんに保証している分の家賃は、回収できてようができてまいが、必ず払わなければなりません。
当然、入居者から家賃を回収できなければ、赤字になってしまいます。
そのため、何が何でも家賃を回収しようと、法規制がされていないことを良いことに、上記のような悪質な追い出し行為を行う家賃保証会社は実際にあるのです。
保証会社側も、「家賃を滞納する=お金がない」わけですから、強引な手段を取ったとしても、訴えられることはないだろうという自信があるのかもしれません。
大手家賃保証会社が敗訴している訴訟事例もあることから、今後も訴訟が増えると予想されます。。
現段階では法規制はありませんが、こうした問題が多発すれば、再び「追い出し規制法案」が審議される日も遠くないかもしれません。