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不動産投資を行なう際、家賃保証会社を利用して滞納リスクに備えることがありますね。
このとき、保証の対価として支払う家賃保証料(保証委託料・賃貸保証委託契約料)は、会計上どのような科目になるのでしょうか。
混同しやすい項目に「前払費用」と「繰延資産」の二つが挙げられますが、家賃保証料がどちらにも解釈できるということもあり、会計の際に迷ってしまうのではないかと思います。
そこで今回は、家賃保証料がどの科目に該当するのか、また会計処理の方法についても詳しく見ていきたいと思います。
そもそも繰越資産とはどのようなものなのか。また、家賃保証も繰越資産にあたるのかを解説します。
繰延資産とは、数年にわたって償却(費用を計上できる)資産のことです。支払い後の経費のうち、長期間にわたって効果が見込めるものを指します。
前払費用と似ていますが、前払費用は支払った金額に対してまだサービスを受けていないものであり、繰延資産はお金を支払ってすでにサービスを受けているものを指します。本来「費用」とされているもので、特殊な会計処理が認められている支出が繰延資産に計上されます。
会社法では、繰延資産は創立費、開業費、株式交付費、社債発行費、開発費の5種類に分けられます。これらの繰延資産は、期間にかかわらず随時償却が認められています。
家賃保証料は、契約時に返金されないという旨が規定されているケースが多くみられます。そのため、前払費用とは別にして繰延資産と考えるのが一般的。
契約期間が終了した後、途中での解約時のいずれも返金義務はありません。繰延資産として考える場合、支出が20万円未満であればその年度の一括経費にすることが可能なので、支出時の一括経費として仕訳を行なうのが基本となります。
家賃保証料は返還されないお金という性格をもっているため、20万円未満であれば支払い時の経費として一括損金処理(少額繰延資産)ができます。勘定科目は「支払手数料」や「保証料」とします。
仕訳は以下のような書き方になります。
(借方)支払手数料 100,000/(貸方)当座預金 100,000
摘要には「初期費用」「事務所家賃保証料」などと書かれます。
20万円以上の保証料の場合には、繰延資産として扱います。繰延資産は一定期間の月数で按分し、毎月分を費用化して計上しなければなりません。
賃貸物件の繰延資産は、保証料の効力がある期間内で支払いを均等に償却しながら損金算入を行ないます。例えば、2年間で保証契約が更新される場合は、はじめに支払われた保証料は2年の期間で償却を行ないます。
一例として、家賃の保証料が24万円で2年契約(2年おきに保証料を支払う)の場合は、1ヶ月あたりの償却額は24万円/24ヶ月で1万円になります。ここでは家賃の保証料として扱うので、「長期前払費用」という資産科目を使います。
(借方)長期前払費用 240,000/(借方)当座預金 240,000として、一度24万円すべてを長期前払費用に計上し、その後当期決算などで経過月数分の金額を償却する場合は、以下のように仕訳をします。
(借方)長期前払費用償却 60,000/(貸方)長期前払費用 60,000
一般的な居住用の住宅は非課税取引となりますが、企業が事業用に賃貸をする不動産は課税取引になるため、仕訳時に注意が必要です。
保証料の扱いについては複雑な要素も多いため、仕訳を丁寧に行なう必要があります。正しく税額を計算し、処理することが大切です。
分からないことがあれば税務署や税理士のアドバイスを受けるなどして、適切に処理を行ないましょう。